熟眠障害とは?

熟眠障害
Deep Sleep Disorder

熟眠障害とは?

睡眠時間をしっかりとっているはずなのに、朝起きても疲れが取れず全然寝た気がしない。眠っているのに起こる「熟眠障害」は、自覚しにくいケースが多々見られます。眠りが浅く、睡眠時間のわりに熟睡した感じが得られないなど、日中のパフォーマンスに影響を及ぼします。中途覚醒とセットでよく見られるタイプです。ストレスで熟眠障害となり、パフォーマンスが低下し、それがストレスとなり更に眠りが浅くなる負のスパイラルに陥る可能性があるため、認知行動療法・睡眠薬のサポートで対応することが重要です。

熟眠障害の人の声

寝ているはずなのに日々の疲れが取れない…

睡眠時間は十分取っているはずなのに、朝起きるのがだるかったり、仕事がはかどらな…

頭が重くて気分が晴れない…夜は少し元気になるけど、朝は憂鬱な日々が続いている….

熟眠障害の原因

ストレス

最も多いとされているのは、職場の人間関係や仕事内容のストレスです。過覚醒状態になっている状態です。上司や同僚との関係に悩んでいたり、仕事量や残業が多すぎて気が休まらない、締め切りに追われて焦っているなどがあります。帰宅後もリラックスすることができないため、眠ってからも緊張状態が続き、目が覚めやすくなります。特に、働き始めの仕事に慣れていない時期は、ストレスが溜まりやすいので注意が必要です。

基礎疾患がある場合

糖尿病や呼吸器疾患、高血圧などの病気の場合は、入眠障害を併発することがあります。けがやリウマチなどの痛みが伴うものや、蕁麻疹・アトピー性皮膚炎などのかゆみも熟眠障害の原因です。

アルコールや薬の影響によるもの

特にアルコールの問題は大きいです。アルコールには催眠作用(寝やすくする)効果があり、入眠のために利用する方が多いですが、睡眠を浅くし依存を形成するため、熟眠障害では特に悪影響です。また、ステロイドや抗がん剤など、特定の薬の影響で熟眠障害になることがあります。カフェイン、タバコに含まれるニコチンなどの過剰摂取も、睡眠の質を大きく低下させる原因です。

生活習慣

生活環境の変化も、熟眠障害を引き起こす可能性があります。海外旅行や出張などによる時差ボケ、シフト制(夜勤勤務)での昼夜逆転が続くと、体内時計に影響を及ぼすため注意が必要です。

熟眠障害の治療適応

以下に当てはまる方は「熟眠障害」の治療適応となります。

  • 寝ているはずなのに疲れが取れない。
  • 寝た気がしない。
  • 体が一日中だるい。
  • 頭痛がする。

※基準はそれによって本人が苦痛や支障を感じているかどうかになります。

熟眠障害の治療薬

デエビゴ

日本で創薬された新しいタイプの睡眠薬で、中途覚醒や早朝覚醒、熟眠障害に広く用いられています。2019年、アメリカ食品医薬品局が、成人の不眠症の治療薬として承認しました。
ベンゾジアゼピン系の睡眠薬と比較して、デエビゴを長期間連続で使用しても耐性が生じにくく、依存症になるリスクが低いというメリットがあります。
作用機序としては、脳内にある覚醒状態を維持する神経ペプチド(オレキシン)の働きを低下させて眠りを促します。
服用してから8時間程度でデエビゴの血液中の濃度は、最高血中濃度の25%程度まで減少します。朝になると内因性のオレキシンが増えてくるので、日中の活動に影響が少ないと考えられています。睡眠・覚醒の周期に関係する生理的な物質の働きを調整し、睡眠状態に仕向けていくお薬のため、本来の眠気を強める効果があります。
効果の強いベンゾジアゼピン系睡眠薬と比べると、依存性や副作用が少ないという特徴があります。作用時間も早く、いつでも就寝できる状態になってから早めの服用が推奨されています。

一般名レンボレキサント
分類オレキシン受容体拮抗薬
薬が効くメカニズム覚醒の維持に重要なオレキシンの働きを制御
薬の特徴本来の自然な眠気を強くする
中途覚醒、熟眠障害、早朝覚醒に有効
依存性が少なく、耐性を作らない
2.5mg,5mg,10mg錠があり、通常は5mgから開始
作用時間4時間程度
(最高血中濃度到達時間:2時間)
効き目マイルド
用法・用量5mg錠を1日1回就寝前に(最大10mgまで)
値段高価
主な副作用・傾眠(10.7%)
・頭痛(4.1 %)
・疲労(2.9%)
・異常な夢(1.8%)
・浮動性めまい(1.6%)
・睡眠時麻痺(1.6%)
・体重増加(1.6%)
・悪夢(1.4%)
留意点・注意点悪夢や金縛りの副作用がしれれている
覚醒を促す効果から食欲が増える可能性あり
抗真菌薬(イトコナゾール・フルコナゾール)、
抗菌薬(クラリスロマイシン・エリスロマイシン)、
抗不整脈薬(ベラパミル)と併用注意

ルネスタ

入眠障害に対して、国内で広く使われている睡眠薬です。非ベンゾジアゼピン系に分類される睡眠薬で、筋弛緩作用やが少ないためにふらつきが少なく、耐性がつきにくいために依存性が抑えられています。他のベンゾジアゼピン系睡眠薬に比べると、ルネスタは睡眠にしぼって作用します。
ルネスタの特徴は、効果発揮が早く、作用時間が短く、翌日に眠気が残りにくい事です。このためルネスタは、安全性の高い睡眠導入剤として知られています。
ルネスタは、覚醒に働いている神経活動を抑えることで眠気を促していきます。「疲れきって眠ってしまうとき」に近い状態を作り出し、強引さのある効き方になります。

一般名エスゾピクロン
分類非ベンゾジアゼピン系睡眠薬
薬が効くメカニズムGABA受容体に結合し、神経活動を抑制して眠気を促進
薬の特徴 寝つきを良くして、薬の切れも早い
苦味が残る人がいる(個人差あり)
1mg〜3mgまであり、通常は1mgから開始
筋弛緩作用などはなく、鎮静(睡眠)作用のみある
作用時間5時間程度
(最高血中濃度到達時間:1時間)
効き目マイルド
用法・用量1mg錠を1日1回就寝前に(最大3mgまで)
※高齢者は2mgまで
値段安価
主な副作用・味覚異常(36.3%)
・傾眠(3.7%)
・頭痛(2.2%)
・口渇(1.8%)
・浮動性めまい(1.2%)
・不眠症(1.2%)
留意点・注意点 空腹時に服用する必要あり
前向性健忘が見られるため、服用直後は就寝する
高齢者で肝機能・腎機能が悪い方は用量に注意
効果が増強し依存形成するためアルコールとの併用注意

リスミー

入眠障害、熟眠障害に対して広く使わている睡眠薬です。短時間型ベンゾジアゼピン系睡眠薬に分類されます。
リスミーは、体の中で代謝されることで4つの物質に変わります。それらが効果を発揮するようにできていて、プロドラックと呼ばれます。そのため、作用がマイルドなのに短時間型の睡眠薬の中では作用時間が長く、穏やかに睡眠をサポートする場合に幅広く使われることがあります。
ルネスタと同様に、覚醒に働いている神経活動を抑えることで、眠気を促していきます。「疲れきって眠ってしまうとき」に近い状態を作り出し、眠りを促します。
ルネスタとは違い、睡眠薬としての働きのほかに、筋弛緩作用や抗不安作用もあります。このため不安や緊張が強い場合には、リラックスした睡眠をもたらしてくれます。
作用時間としても睡眠時間の全体をカバーしてくれているため、入眠障害だけでなく熟眠障害にも効果が期待できます。依存性を形成するほど強いお薬ではないので、効果の強さは他のベンゾジアゼピン系と比べるとややマイルドになります。

一般名塩酸リルマザホン
分類短時間型ベンゾジアゼピン系睡眠薬
薬が効くメカニズムGABA受容体に結合し、神経活動を抑制して眠気を促進
薬の特徴寝つきを良くし、熟眠効果も得られる
睡眠時間全体をカバー
1mg,2mgがあり、通常は1mgから開始
抗不安作用もあり、落ち着いて床に入れる
作用時間10.3時間
(最高血中濃度到達時間:3時間)
効き目ややマイルド
用法・用量1mg錠を1日1回就寝前に(最大2mgまで)
値段安価
主な副作用・眠気(1.48%)
・ふらつき(0.65%)
・倦怠感(0.55%)
・口渇(0.50%)
・頭重感(0.45%)
留意点・注意点朝方に眠気が残ってしまうことあり
軽度の筋弛緩作用があり、高齢者では転倒に注意
高齢者にはせん妄に注意
効果が増強し依存形成するためアルコールとの併用注意

【漢方】酸棗仁湯(サンソウニントウ)

酸棗仁湯は、体力が低下して、心身が疲労している人の不眠の改善によく用いられる漢方薬です。神経症、自律神経失調症による不眠の治療などにも用いられています。
不眠のタイプとしては、特に覚醒と睡眠のリズムが乱れて、夜間目が冴えて眠れない、夢が多い、熟睡感がないといった症状があるような場合に適します。
ストレスが高くいつも緊張してる人は心身を緩める作用があり、寝つきに対しての効果が期待できます。
効果の確立されている睡眠薬と比べると効き目が弱いですが、いきなり睡眠薬を飲むのに抵抗のある場合は一度効果を試してみても良いかもしれません。

一般名酸棗仁湯(さんそうにんとう)
分類医療用漢方
効果・効能体力が低下して、心身が疲労している人の不眠の改善
薬の特徴主役の”酸棗仁”に穏やかな鎮静作用がある
西洋薬の様なキレはないが副作用は少ない
抗うつ薬(フルボキサミン)との併用でも服用可能
用法・用量1日7.5gを2~3回に分割し、食前又は食間に経口投与
※年齢、症状に応じて増減
値段やや安価
主な副作用・胃の不快感
・食欲不振
・吐気
・下痢
留意点・注意点他の漢方と併用時は偽性アルドステロン症に注意
かえって食欲が無くなる事がある

治療する上での注意点

・睡眠薬は命に関わる病気に対する薬ではないですが、中枢神経系(脳=覚醒中枢、睡眠中枢)に作用する薬ですので、「薬の量を変更する」「薬剤を変更する」「意図的に中断する」という行動は自己判断で行わないようにしてください。

・比較的、依存性や耐性、副作用が少ないと知られている当院の睡眠薬であっても、急に断薬をすると反跳性不眠(以前より眠れなくなる事)を起こす原因となります。

・薬を減らすときは医師の診察の元、「用量を少なくする(漸減法)」「飲む間隔を空ける(隔日法)」で行います。

お薬の値段

デエビゴルネスタリスミー酸棗仁湯
値段(再診)7,480円(税込)3,850円(税込)3,850円(税込)4,620円(税込)
値段(初診)9,130円(税込)5,500円(税込)5,500円(税込)6,270円(税込)

※各睡眠薬は1ヶ月分(30錠分or60包)のお値段になります。
※3ヶ月以上のお薬定期配送についての詳しいお値段は料金とプランからご覧ください。

1日あたりの料金は128円〜241円と、精神科や心療内科に通院する料金と同程度の負担で治療を続けられます。予約が簡単なオンライン診療でお薬が自宅に届く事を考えると、時間も節約できます。

熟眠改善プラン

「寝た気がしない」「睡眠が浅い」「朝、ぼーっとする」等の症状に対し、まずは睡眠の質を改善し熟眠するためのお薬を試すプランになります。7日間試してみて、効果や副作用を確認し自分に合う睡眠薬を見つける事が出来ます。

初診4,800円(税込5,280円)
再診3,300円(税込3,630円)

※リスミー1mg7錠 or デエビゴ5mg7錠・酸棗仁湯14包の処方です。
※リスミー1mgかデエビゴ5mgは症状に応じたどちらかの処方になります。

よくある質問(症状・治療)

熟眠障害は治りますか?

適切な介入で治ると言われています。

今のその苦しみは一生は続かないと思ってください。ストレス負荷のかかる時だけ睡眠全体をカバーする副作用の少ない睡眠薬でサポートするなどして、ご自身で苦しまない様にしてください。1番多いトラブルは、毎日熟眠感がないまま仕事のパフォーマンスが低下し、そのストレスでまた睡眠が浅くなるという悪循環に陥ることです。

寝る前にお酒を飲めば熟睡できますか?

睡眠をとるためにアルコールを飲むことはやめましょう。アルコールは寝つきがよいので、つい頼ってしまいがちですが、眠った後にすぐに目が覚めてしまい覚醒しやすいため不眠症や熟睡感の改善に効果は期待できません。寝つきがいいといった効果も徐々に薄まっていき、飲酒の量が増えていく傾向があるので不眠症の為に飲酒をするのは控えましょう。

妊娠・授乳期に関して睡眠薬を服用しても大丈夫ですか?

妊娠への影響(FDA(アメリカ食品医薬品局)薬剤胎児危険度基準)、授乳への影響(Hale授乳危険度分類)では明らかにネガティブな影響は報告されていません。

ですが、完璧に全く影響がないとは誰も言い切れません。母乳で育てることは児へ良い影響がある事から、授乳中は①人工乳哺育にする②睡眠薬の量を減らす(減量や半錠)などの工夫をお勧めしています。

睡眠薬を選択する、飲む時のコツはありますか?

睡眠薬を選択・服用するときは、「まずは低用量から始める」「飲んだら寝る」を守ってください。

いきなり多くの用量から始めてしまうと、眠れなくなった時に依存性の高い強い睡眠薬に進まなければならなくなります。当院の睡眠薬を選択するときはまずは低用量からお試しください。

また、超短時間型・短時間型の睡眠薬は効果の発現が早く、前向性健忘と言って薬を飲んでからの記憶が薄れることがあります。ですので、薬を飲んでから何か活動をする事は控えて、就寝する様に心がけてください。